鬼の目に、涙。

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「困るのよ。はやく言ってくれなくちゃ」 「でも、君はゆっくり考えろって」 「まさかこんなに長くなるなんて思わないじゃない」  妖精は怒ったような表情で鬼の目の前に移動する。 「あのね、妖精の世界には決まりごとがあるの。助けてもらったら、その恩はかならず返せって。だからあなたの願いを叶えるまでは、私は妖精の国に帰れないの。わかる?」 「わかってるよ。だって君はあれからずっと僕にぴったりくっついてくるじゃないか」 「そうよ。いつ願いを思いつくかわからないでしょ」 「でも、なかなか思いつかないんだよね」  首をかしげる鬼を、ため息混じりに見つめていた妖精は、 「そうだ。じゃあいっそ、私から提案するっていうのはどうかしら?」 「提案って、どんな?」 「例えばほら、あなた今ご飯を作っているけど、毎日自分で作らなくてもおいしいご飯が出てくるって願いはどう?便利でしょ」 「それはいらないかな。ご飯は自分でつくってこそ美味しいんだからさ」  あらそうなのと言った妖精は、しげしげと鬼の顔を眺めると、 「じゃあ、見た目を変えるっていうのはどう?あなたほら、けっこう怖い顔をしているじゃない。だからもっと優しい顔のイケメンにするとか」 「そんなことすると僕が僕じゃなくなるじゃないか。だからいいよ」 「だったら人間と仲良くなるっていうのはどう?この一週間に出会った人たちはみんなあなたのことを怖がって逃げ出したじゃない。あなただって人間と仲良くしたいでしょ?」 「それは……僕も考えたことがあるんだ」 「でしょ?それならその願い、叶えてあげましょうか?」  鬼はまじめな顔で、左右に首を振って見せた。 「え?どうしてなの」 「だって、そんな不思議な力を使って人間と仲良くなれても、それで本当に仲良くなったとは思えないし。それに、向こうは仲良くなりたいなんて思ってないんだから、こちらの勝手で仲良くなっても迷惑なだけだろ?」 「あなた、自分の願いを叶えるのに、相手のことまで考えちゃうわけ?」 「そうだよ」 「自分がよければそれでいいとは思わないの?」 「そんなこと思わない」
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