1章:始まりの日の朝

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1章:始まりの日の朝

幼稚園の頃、将来の夢を聞かれて『せかいせいふく』だって言ったら、先生には怒られたけど、父は笑って「九条家の娘たるもの、そのくらいの心意気でいなさい」と言った。 小学校の頃、クラスの男子とケンカになって、最終的には相手をぐうの音も出ないほど打ちのめした。相手の親も、私の母も、怒り心頭だったけど、父はまたそこでも「九条家の娘たるもの、だれにも負けないようにいなさい」と言った。 中学生になって、高校生になって、「九条家の娘たるもの」と言われる回数は減ったものの、私の中にはその精神がいつまでも根付いていた。特に私は父の血が濃いらしい。顔はあまり似ていないが、性格はそっくりだと言われることが多い。 だからこそ、大人になった私は今… 「九条家の娘たるもの」こんな男に翻弄されるわけにはいかないのだ。 目の前の男を睨むと、彼は、今まで見たことのないような狂暴な笑みを浮かべる。 いつだって、従順だった。何だって私の言う事を聞いた。そんな男だったはずが、だ。 今、目の前にいるのは…誰?
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