第1話 宿敵魔王と再会しました……現代で!

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「熱でもあるのか?」  ゆっくりと利都が紫音の腕をほどき心配そうに(うかが)う。 「私……」  なにを、どう伝えればいいのかわからない。そのとき。  「なんだ、たいしたことなさそうだな」  紫音は目を見張り硬直した。自分でも利都のものでもない第三者の声が部屋に響いたからだ。先に反応したのは利都だった。 「凰理(おうり)」  おうり、オーリ。  利都が口にした名前で紫音の記憶はさらに触発される。魔王オーリ。やはり彼は紫音の宿敵だ。紫音は凰理を睨みつけるが、相手はまったく意に介さない。 「ほら、さっさと離れろ」  あまつさえ手の甲を向け面倒くさそうに指示までしてくる。 「なんでおまっ、あなたに命令されないとならないの?」  極力感情を抑え込み、冷静に返す。対する凰理は顔色ひとつ変えない。 「ずいぶんな口の利き方だな」 「そうだよ、紫音。彼が倒れた君をここまで運んできてくれたんだ」 「はぁ!?」  利都の説明に紫音は目を()く。信じられない情報だが、事実だとすると卒倒しそうになる。  周りにどう思われたのか想像するのも(はばか)れる。よりにもよって宿敵に情けをかけられるなどありえない。 「……私、退学する」 「大袈裟だなぁ。迷惑なんて気にしなくていいんだよ。なにもなくて本当によかった」  紫音が顔面蒼白で告げたのを、利都は冗談としか捉えず声をあげて笑った。 「体調を崩すことは誰にでもあるって」  的外れな慰めに紫音はますます屈辱で肩を震わせる。 「ところで、ふたりは知り合いだったのかい?」  しかし利都の問いかけに紫音は目を(しばたた)かせた。
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