第1話 宿敵魔王と再会しました……現代で!

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「紫音、倒れたんだから無理は禁物だよ。言うことをききなさい」  優しくも有無を言わせない迫力があるのは、やはり前世からだ。紫音の反論を封じ込め、利都は仕事へと戻っていく。  利都がいなくなり、重い沈黙が降りてくる。口火を切ったのは紫音の方だった。 「……なにを企んでいる?」  強い眼差しを凰理にぶつけ、容姿には似合わない低い声で尋ねる。凰理はゆっくりと紫音のそばまで歩み寄ってきた。 「企む? 純粋に久々の再会を喜ぼうとは思わないのか?」 「思わない」  からかい混じりの返答に紫音は即座に答えた。どうして喜ぶ必要があるのか、自分たちは――。  そのとき凰理の手が紫音に伸びて来て長い黒髪に触れた。 「触らないで!」  反射的に叫び、彼の手を払いのける。完全な拒絶にわずかに凰理の目が丸くなった。その彼の反応を見て、紫音の心はさらに揺れる。 「喜ぶわけない! 私はあなたを……」  言いかけて口を噤み、そのタイミングで部屋のドアがノックされる。 「紫音、いる?」  荷物を持ってきた実乃梨の声が聞こえ、紫音は素早くベッドから出た。手櫛で髪を整えながらパーテーションの間をすり抜け、ドアのところで待つ実乃梨の前に姿を現す。  様子を心配する実乃梨の背を紫音はさっさと押して出て行った。  なんで今さら私の人生に現れたの!? どうして思い出してしまったんだろう?  胸が締めつけられるように痛むのはどうしてなのか。複雑に渦巻く感情はなにを訴えているのか自分にもわからない。紫音はひたすら歩を進めた。
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