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そして、藍子は気がつく。小笠原から予感がして来たと戸塚少佐が言っていたことは、やはりペアで来なくてはこの話がなくなる予感がして、来てくれた?
いまのままでは祐也と一緒に新しい部隊へ選ばれた話がなくなってしまうのは本当の話?
呆然としている藍子を解っているかのように、戸塚少佐は強く肩を抱き寄せて藍子を連れて歩き出す。
「行こう、藍子」
小さく頷いて、藍子は力なく歩き出す。
恋人のふりを始めてしまった少佐と一緒に。
だが里奈はそれでも引かない。
「なんの力もない家族を恫喝して脅したと、夫の上官に報告します」
さすがのクインさんも一瞬だけ顔をしかめた。でもすぐにいつもの意地悪い笑みを見せる。
「どうぞご勝手に」
里奈がぷんと背を向けて、住んでいる官舎へと帰っていく。
里奈を直に見た戸塚少佐も呆れた顔だった。
そしてまだ奥様たちの視線が。
「ちょうどいい、情熱的な恋人だと印象づけておこう」
なんて言って、藍子の黒髪にキスをしている。
「ちょ、ちょっと少佐!」
「さあ、ここからさっさと去る。話は中でじっくりな」
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