18.恋人のふり

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 藍子の住まいなのに、藍子をさらうようにぐいぐいと抱いたまま階段を上がろうとする戸塚少佐。  だけれど藍子も彼から聞きたいことがいろいろある。それに、藍子の肩を抱き寄せていても、彼の横顔に眼差しはいつもの少佐のままだった。  ―◆・◆・◆・◆・◆―  藍子の住まいがある階まで、一緒に階段を上がる。 「もう、どうしてここがわかったのですか」 「小笠原でアグレッサーとして選ばれるようになるとな、いろいろとツテやコネも増えてだな、知ろうと思えば知れてしまうんだ」 「わざわざどうして」 「よしゆっくり話そう。部屋に入れろ」  相変わらずの上官口調で藍子も溜め息をつく。 「もう……」  藍子も観念して鍵を開け、とうとう戸塚少佐を自宅に招き入れる。 「あ、でも悪いな。突然……。もしかして散らかっているとか」 「大丈夫です。ただし質素な部屋ですよ。女らしさのかけらもないので心からがっかりしてくださいね」  驚かされてばかりで藍子もつい口悪く言ってしまったのに、クインさんはやっぱり余裕でくすりと笑っただけ。
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