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その声に、この家にいる誰もが反応した。
特に息子が笑顔になって走り出す。
「パパだ!」
「エミルだな」
喜びいっぱいに走り出した息子のあとを、今度は祖父の弦士パパが追いかける。
「ミミだ」
隣の部屋の窓辺でホームワークをしていた心美も、椅子から降りてリビングに戻ってくる。
そして藍子も、エプロン姿のままキッチンからリビングへと移動して、心美と顔を見合わせ、彼の姿を待った。
「マーケットでママに会ったんだ。それと、今日はユキも一緒だ」
黒ネクタイに夏の白シャツ制服の夫が、息子をだっこした姿でリビングに現れた。
「おかえり、ミミ!」
心美もエミリオのそばに駆け寄っていく。いまも変わらずに、お気に入りのお兄さんのようにして、エミリオには甘えるように抱きつくこともある。エミリオも心美が迎えてくれることに、笑顔を見せる。
パパが大好きな息子をだっこして、小さな親友である少女の黒髪を撫でる。
こうして見ると、二児のパパにも見えてしまうほどに、父親としての貫禄も備わっている。
その後ろから、彼にそっくりな金髪の美魔女も登場。
「マーケットでエミルに出会ったの。ユキ君とお買い物をしていたのよ。だからバスで帰らずに、息子の車に乗せてもらってきたの」
さらにエレーヌ義母の後ろから、背が高い男性もひょっこりと顔を出してきた。
「おじゃましまーす。心美のお迎えついでにって、クインさんに誘われちゃって……。夕飯時だろうに、すみません」
雅幸が顔を出した。急だろうがなんだろうが、藍子はかまわずにユキも迎え入れる。
「ひとり増えるぐらい大丈夫よ。一緒にご飯にしていって」
「えへへ。藍子さんのメシうまいから、逆らえないっす。それに、クインさんのモヒートにも釣られちゃって」
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