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19.泊まるところはない
珈琲の粉と紙フィルターやサーバーを準備しながらお湯を沸かし、藍子はやっと、ソファーでくつろいでいる少佐に聞いてみる。
「恋人のふりってなんですか。それもいきなり訪ねてくるなんて、びっくりしました」
「でも。助かっただろう。こんなことじゃないかと思って来たんだ」
こんなこと……、藍子から尋ねる。
「私と斉藤がこじれると思われていたのですか」
「研修の結果と評価が届いただろ。もうわかっただろう。何の研修だったか。合格おめでとう」
やっぱり。コーチをする演習をする側のアグレッサーパイロットは知っていた。
「本当に、点数なんて関係がない研修だったのですね。あれ、ほんとうは研修に来ている指導される側の隊員に、あんなこと伝えてはいけなかったのでは?」
「それな。スコーピオンのウィラード部隊長にこってりしぼられた」
このクールなクインさんが、あのスコーピオン大佐に怒られる? 想像できなくて藍子は目を丸くする。
「どうして私にあんなことを、わざわざ言いに来てしまったんですか」
「だから。言っただろう。自信のない顔をしているのが気になって……だよ」
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