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「そんなこと、アグレッサーのパイロットは気にしてはいけないのでは」
「そうだな。口頭でヒントやアドバイスは後ですること。まずは演習で空でわからせることだ」
なのに。どうして……。珈琲の粉を紙フィルターにいれていた手を藍子は止める。
「だから、俺は……、いつもモンキーちゃんになってしまうんだ」
「あの、どういう?」
藍子が珈琲を淹れる手元をみつめていた少佐がそっと顔を背け、日が傾いてきたベランダを見つめている。
「だから、藍子のように、女なのに頑張って飛んでいる子に、ああすればいいこうすればいい、こうして男の飛び方と差別化をしたらいい、こうして身を守れと言いたくなって近寄ってしまう。でもそれを言ったら、俺はアグレッサーから外される。上官にどやされる。だから、いつも言いたくなって近づいて、言えないから……」
「えっ、言えないから、モンキーちゃんと意地悪を言って誤魔化していたんですか!」
戸塚少佐がそっぽを向けたまま、なにも言わない。どうやら図星らしい! 藍子は喫驚する。
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