19.泊まるところはない

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 だがその後に、違うものが襲ってきた。つまり、それって……。私のことをいつも気にして心配してくれていた? だからいつも研修に行くとすぐに目があって、近づいてきてからかわられて? 「この前も、ウィラード大佐に藍子に近づいて話しかけていたところを見られてな。うっかり点数なんか気にするなと言って、危うく研修方法の裏側を悟られるかも知れなかったとめちゃくちゃ怒られた」 「確かに。減点方式がただの心理的に追いつめるためのツールだったとわかれば、あの研修は意味をなくしますものね」 「そのせいもあって。ジェイブルー105にはちょっとムキになって追いつめたところもあるな。スコーピオンのウィラード部隊長に、藍子に特別な感情を抱いて接しているわけではない、どんな時も容赦なく攻め落とせると証明するためだった。なのになあ、そんな力んだ時に限って、かわいいモンキーちゃんにキャノピーの上を掠められて大失態だ。あのこともウィラード大佐にどこかで冷静ではなかったのではと注意をされてさ」  ああ、それで。あの日の夜、ダイナーにお酒を呑みに来るほどむしゃくしゃしていたのかと藍子も納得した。
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