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「でも、そこで、少佐がそんなミスをする原因になったモンキーに出会ってしまったんですね。だから……? むしゃくしゃしている原因の女を征服したかったとか?」
湯が沸いて、藍子は紙フィルターに入れた珈琲粉へとゆっくり円を描きながら注ぐ。あたりに珈琲の香りが立ちこめる。
「征服されているように感じたのか。藍子は……」
「いいえ。とても優しかった」
ひと晩だけの関係だと思っていたから、あの日の夜をこうして話しているのが藍子には不思議な感覚だった。
藍子の返答にエミリオ戸塚少佐は、そっと微笑んでくれている。
「研修の結果と藍子が合格したと知って……。転属になるとしたら、藍子とカープはどう決断するのか気になった。特にカープだ。藍子からカープの妻との確執を聞いてから、俺なりに少し探りを入れて調べてみたら。そうだな。カープの知り合いは割と妻の性質を知っているようだったな」
「そのようですね。ボスの河原田中佐が斉藤に妻のことで初めて言及されたので、知られていることなのだと自覚していたところです」
「せっかくのキャリアと腕前だ。この話がなくならないようにしろ」
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