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「そう思うなら。藍子に恋人がいれば、あの妻も気が済むのだろう。斉藤と一緒に転属することを受け入れられるんじゃないのか」
だから、恋人のふり? 藍子はまた呆気にとられる。
「だからって。そんな、少佐ほどの男性にそんなことしてもらうだなんて、絶対にダメですから!」
「どうして。俺は東南の空を飛ぶアイアイを見てみたい。カープの妻がそこを気にしなくなって、斉藤も気兼ねがなくなって、このままペアが維持できることが藍子の最大の望みなんだろ」
その通りだった。だけれど、それがこんなことで解決出来るとも思えない。
「ですけれど……。少佐が恋人のふりをしてくれても、もうとんでもなくこじれているので無理だと思います。見ましたでしょう。『先輩』にだってくってかかってくるんですよ」
「あれはカープが本当の意味で妻と向きあっていない証拠だ」
「でも、そう簡単に変わらないと思いますよ。いいんです、わたしはもう、ペアも解消、小笠原行きがなくなることも覚悟しましたから。その後は、岩国から出て行く希望を出すつもりです」
戸塚少佐が驚きの見せ、哀しそうな目を見せてくれる。
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