1.機動追跡隊 ジェイブルー

1/10
4059人が本棚に入れています
本棚に追加
/1523ページ

1.機動追跡隊 ジェイブルー

 空には見えないラインが存在する。  見えないラインは『その国の尊厳がある』と、元エースパイロットだった上官が言った。  そのラインを越え、こちらの領域を侵すことは、その国の民の尊厳を敬わない行為だと彼は言う。  五島列島、上空。 「今日はなんにも来ないな。このまま終わってほしいなあ。あと三十分も飛んでなくちゃいけないのかよ」  機体の後部にいる相棒が溜め息混じりに呟いた。  『ジェイブルー』という機体をコックピットで操縦している藍子も致し方なく答える。 「あと三十分で帰投、もう少しだから我慢しなよ」  女性パイロットが誕生して久しく、いまは藍子のようにコックピットに乗り込む女性は珍しくもないが、多くもない。  後ろにいる相棒のように『不明機データ採取の操作と管理』を担当するパイロットなら女性も多いが、藍子のように『機体操縦』を担当する女性パイロットはまだ僅かだった。 「ここんとこ静かじゃん。今夜さあ、結婚記念日だから早く帰らないとうるさいんだよ。わかるだろ?」 「あー、そっか。もうそんな時期なんだ。それは奥さんのために早く帰らなくちゃね」
/1523ページ

最初のコメントを投稿しよう!