「ボクと付き合わないか?」

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「ボクと付き合わないか?」

 きっかけは2ヶ月前の出来事だ。  その日は高校一年から付き合ってい彼女にフラレた日だった。理由は簡単。好きな人ができたから別れてほしいと。  「後腐れなく仲良くやろうね」と笑顔で別れを告げたものの、内心は土砂降りの雨模様だった。昼の暑さが落ち着いて涼風が吹くようになった夕方、俺はあてもなく街を歩いていた。  街の喧騒の中にいれば、もの悲しさも和らぐと思ったからだ。しかし人の心というものは、そんなに単純ではなくて。すぐに無意味な行動だと思い知った。  気づけば大学の前だった。緑の木立が風に揺れてザワザワと音を立てる。俺の通う大学は緑が多く敷地内には、ベンチやカフェテーブルが配置され学生がくつろげるようになっている。小さな噴水もあって、まるで公園のようだ。    その噴水に続く石畳の道を緩慢に歩いた。噴水に行こうとしたことに特に意味はない。たまたま彼女に振られて、たまたま家に帰りたくなくて街を歩いていたら大学の前に通りかかっただけ。  噴水の向こう側、歪んだ人影が見えた。遠目なので男女の判別は付かない。真夏だというのに全身真っ黒な服を着ていることだけが分かる。俺の足音に気付いた人影は噴水から顔を覗かせた。  
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