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「質問大会をしようじゃないか」
「おっと、いけない。次の講義の時間だ。すまないが席を外させてもらうよ」
筒城は腕時計に目をやって、小走りに図書館を出ていった。俺は空きコマなので引き続き課題に取り組む。が、思うように進まず嘆息した。思考を邪魔するのはやっぱり筒城のことだった。
彼女と交際(?)し始めて早二か月。何が目的で俺と付き合っているのか分からない。遊ばれて捨てられるのか? デートらしいデートもしていないし、男女関係のような行為にも至っていない。筒城は指一本触れてこないし、無論俺は不純な理由が罪悪になって手出しできない。
逆に俺はなんで彼女と付き合っているのか。欲求不満? いや違うな、筒城を元カノの代替品にしたいだけだ。筒城は低身長の割に女としての肉付きは悪くない。他学部他学年の男子学生に人気があるのはその理由だろう。
考えても埒が明かないので、今はただ流れに身を任せようと思う。そして目の前の課題を少しでも片付けなくては。
***
「ボクたちって恋人っぽくないよな」
土曜日、駅前のブックカフェの一席。俺はコーヒー、筒城は紅茶とワッフルを側に取り留めのない話を交わしていた。
意図せず大学以外で偶然出会ったのはこれが初めてではない。一回目は古書店、二回目は市立図書館、三回目はブックカフェ、つまりは今日だ。
本のあるところに筒城在り。この法則が成り立つ日も近いだろう。「ボクがおごるから」というので遠慮せずコーヒーを頼み、今に至る。
「そもそも俺たちは恋人か?」
「ひどいな、ボクの告白を忘れたとでもいうのか?」
「いや、あんな変な告白されたの初めてだよ。忘れるわけない」
筒城はにんまりと笑う猫のように目を細めて嬉しそうにしたので、すかさず否定する。
「そういう意味じゃない」
「とりあえずその話は置いといてボクら、お互いのことを知らなすぎるんだよ。こうして今日運命的に出会ったわけだし、ここは一つ質問大会をしようじゃないか」
運命的ってなんだ。ただの偶然だろう。流れに身を任したからには、彼女のペースにのまれることも致し方無い。
「先攻はキミに譲るよ」
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