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第1幕第1場「不羈の花」
なだらかな起伏の上を覆い尽くす炎の花は、いよいよ鮮やかさを増して見えた。他に何も育まない荒野で、この時期に咲くのはヒースだけだった。
石垣の格子柄が横たわる牧草地から吹き降りてくる風が、蜂蜜色の街を染めてゆく。
家々の屋根を撫でるように響き渡る鐘の音が丘の上にまで登りつめてくるのを、サイマンは東向きの窓越しに聴いた。目に染みる白とともに、遠音は幾重にも波のように押し寄せて、耳の奥から離れていく。
ピチュピチュと問いかけてくる小鳥につられて窓を覗くと、青い屋根の陰からちょうど、二頭の白馬が出てくるところだった。敷石を辿る馬車を見た途端、ダイニングに寄るのをわざわざ避けてきたことが急に空しく思われて、彼は目を背けるようにしてまた廊下を歩き出した。
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