ネイキッド・ラブ~90分のメタモルフォーゼ~

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 気がついたら、部屋が暗くなってた。  翼が太い腕に、僕の頭を乗せてくれているみたいだった。 「気がついた?」 「……うん」 「メシ、食う?」 「いらない……」  まだ体はだるくて、起き上がるより、こうしていたい気分だった。  翼の顔を見るのが恥ずかしいけど、そのままの格好で、ちょっとだけ気になってた事を翼に聞いてみることにした。 「翼。ひとつ聞いていい?」 「何? 」 「何で、今日突然僕に告白する事にしたの?」  翼はしばらくどうしようかな、と迷うように口をモゴモゴ動かしてたけど、ようやく口を開いた。 「……絵描いてるお前がさ、すっげ格好よかったんだよ。おまけにエロいし」 「え?」 「こんなのほっといたら、絶対他の奴に取られるって思ったらさ、もうガマンできなくて」 「なにそれ」  僕は、おかしくなった。だって、それじゃ僕と一緒だよ。  僕が翼に感じてた嫉妬や憧れみたいなのを、翼も感じてたんだ、と思うと、少しほっとした。  やっぱ、幼馴染なんだ。  ずっと一緒にいたから、考える事まで似てきちゃってる。 「笑うなよっ……クソ、もう少しマトモに告白するつもりだったのに」 「でも、それじゃ多分、僕自分の気持ちに気がつけなかったよ。今日だから、だよ」 「へ? そうなのか? 」  そうだよ、翼。自分の気持ちに気がついたのだって、ほんの偶然みたいなものだし。普通に告白なんてされてたら、多分引いてたと思う。 「……僕もね、翼の事描いてて、一人だけこんなに、夢にめがけて突進して、かっこよくなって、ずるいって思ってたんだ」 「じゃあ、今日来れなかったモデルに感謝だな」 「そうだね」  僕たちは顔を見合わせて笑った。  一緒に、翼の腹が盛大に鳴る。 「わー、カッコ悪」 「うるせぇ! 頑張ったから、腹減ったんだよ」  恋人、っていうには、僕たちはお互いを知り過ぎちゃってる。そもそも、なんで好きになったかさえ分からない位、一緒の時間を過ごしてるんだ。  でも、幼馴染っていう枠には、もう収まれない。  かっこつけも、日常も、どちらにも戻れなくなっちゃったけど。  でも、それでもいいと思ってる僕がいる。 「メシ、食おう、メシ」  よっこいしょと、年寄りくさい事を言いながら、翼は起き上がる。  かっこいいけど、全然かっこよくない、僕の好きな人。 「終わったらメシなんて、お前サイテー」  そういう僕の髪をぐちゃぐちゃとかき混ぜて、翼は嬉しそうに笑った。 「お前が好きな、小野寺翼っていうのは、そういう男なの」  それで納得しちゃう、僕も僕なんだろうな……。
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