ネイキッド・ラブ~90分のメタモルフォーゼ~

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 そして午後五時。  まだ太陽のかけらは空に残っていて、部屋の中は電気をつけなくてもわずかに明るい。遊びから帰る小学生の笑い声が、遠くから響いてくる。  冬はこたつになる低いテーブルの上には、コーラと缶ビールと、コンビニ弁当とつまみの菓子やら何か。  それは全部ビニールに入って、テーブルの上に投げ出されたままになっている。  せめてビールは冷蔵庫に、と思っているのに、それさえ許してもらえない。  煎餅布団をさっと広げると、あっとその上に組み敷かれた。もちろん、僕の力でそれに抗う事はできない。 「シャワーくらい浴びさせろ」 「ダメ。どうせ、いろんなモノでグチャグチャになるんだから、終わってからでも一緒じゃん」  引きちぎりそうな勢いで、シャツとその下のTシャツを脱がされる。 「ちょ……! がっつきすぎだよ、翼っ!」 「だって、学校でおあずけくらってるんだぜ? あの後、モデルやってる間中、おさえるの大変だったんだから」  ろくに僕の顔を見ようともしないで、翼は本日二回目のジーンズ下ろしにかかってる。 「わかってるよ! でも……」  そんなに急にされると、なんだか怖いんだったら、とは言えなかった。 「それに、俺、何年ガマンしてたと思うんだ?」  いきなりまともに見つめられて、ドキっとした。視線の意味を分かってる今は、授業がはじまったばかりの時みたいに、その視線を上手に受け止められない。  翼の目の奥にある、鈍く光る僕への欲求に、どう答えていいのか分からない。  なんで僕はこんなに不器用なんだろう? 「それは……ゴメン」 「だから、今夜は覚悟してろよ」 「…………あんまりひどい事したら、二度と口きいてやらない」 「ひっでぇ」  笑いながら、翼は僕のジーンズに手をかけた。僕も腰を浮かせて、それを脱がせやすいようにする。  満足そうに翼がジーンズを引き摺り下ろすと、僕はまた、ソックスはいたままの方がエロいとか言われたらいやだから、足の指を使って行儀悪く靴下を脱いだ。  翼はちょっとだけ残念そうな顔をした。 「変態」 「悪いか」 「あと、僕だけハダカにするな。翼も脱げ」  体の間に無理矢理膝を入れて。翼を軽く蹴り飛ばす。 「お前、文句多いよー」 「黙れ。だって……恥ずかしいじゃないか。僕だけ何にも着てないなんて」  翼は、ぽかんとした。僕、何か変な事言ったかな?  「あのさ、ミサキってさ、そういうの計算してやってんの? 」 「え? 計算?」 「……じゃないよなぁ。それなら、とっくに……」 「とっくに?」 「なんでもない。分かったよ。脱ぎゃいんだろ?」  翼はTシャツに手をかけると、勢いよくそれを脱ぎ捨てる。薄い布の下から、鍛えあがったきれいな体が現れた。  教室内は蛍光灯の光だったけど、今は翳り気味とはいえ、太陽の光だ。まろやかな陰影は、このまま絵にしたい位だ。思わずデッサンしておきたい衝動にかられて、僕はおかしくなった。  どんだけ、絵の事考えてるんだろう?   でも今は、絵の事より、翼の事を考えたい。  この体は、僕のものなんだ。  手に、頭に刻み付けておかなきゃ。  きつそうにジーンズを脱ぎ捨てた翼は、ゆっくりと僕の体の上に覆いかぶさった。 (こういう時、どうしたらいいんだろう……?)  きくわけにも行かないから、僕は目を閉じた。翼の腕が、僕をぎゅっと抱きしめる。 「ミサキ……ミサキぃ……」 「な、何?」 「ん……やっと、こうする事ができたんだなって」  ようやく、翼がキスをしてくれる。  翼の熱い唇から、緊張で冷たくなった僕の体に、熱が吹き込まれてくるみたいだった。  溶岩みたいに熱い舌が、僕の舌を捕らえて、こね回す。びくびくと僕の舌が引こうとすると、ぬるりとそれを阻んで、誘うように口内をこすりあげる。  最初はにゅるにゅるしたその感触になじめなかったけど、ずっとされているうちに、こわばっていた体から力が抜けてきた。  ちょっとだけ、翼がしてるように、舌を動かしてみると、翼の体がぴくりと震える。 (あ、こうすると、気持ちがいいんだ)  そうやってると、段々体が熱くなってくる。やり場に困ってた手を、こわごわ翼の首に回してみる。短く刈り上げた後頭部の毛が、ちくちくと指に触れる。翼は嬉しそうに僕の唇を舐めた。  翼の唇が首筋をキスしながら降りてゆく。くすぐったさと、背筋がゾクゾクする感覚が混ぜこぜになって、体が釣り上げられた魚みたいにくねる。  すっと、翼の唇が、僕の胸に下りてきた。 「ちょ……! 女の子じゃないんだから、そんな所……」  触らなくても、と言おうとして、乳首をしゃぶられた。 「んっ……!」  何か、首筋より、もっと変な感じがした。 「男でも、ここ、こうやられると感じるんだって」  ちゅぱちゅぱ音を立てて吸われると、ぞくぞくっとした感覚が肌に走る。 「やだ……翼……それ、ヘンな感じだから……っ!」  もうやめて欲しくて下を見ると、翼の鼻筋と、すっかり乱れた前髪が見えた。目を閉じて、僕のまったいらな胸を吸う様子を見てると、突然翼への愛しさがこみ上げてきた。 (どうしよう……すごい……翼の事、好きかも)  僕はぎゅっと翼の頭を抱きしめた。 「気持ちいい? ミサキ」  顔を上げた翼の唇は、濡れていた。それから、僕の胸も、翼の唾液でねろねろになってた。いつの間にか、二つくらい、赤くキスマークがつけられてる。  すごく恥ずかしい。  僕は答えられなくて、目を閉じて横を向いた。 「ホント、お前ってば、かわいくなくって、かわいいよな」  翼はそう言うと、僕のツンと立ち上がってしまった乳首をきゅっと噛んだ。  それを、さっきみたいに、舌で嘗め回す。  変な声が出そうで、必死で唇を噛んだ。  それに気がついた翼は、ずり上がってくると、僕の唇のはしにちゅっとキスをした。 「ミサキ、さっき、学校で声出すのガマンしてたろ?」 「う……当たり前だろ」 「いいよ、ここなら、声出して」 「そ、そんなの嫌だよ! ラブホじゃあるまいし。それに、こんな安普請のアパートじゃ丸聞こえじゃないか」 「心配するなって。下は空き部屋。横は夜遅くまで帰ってこないから、大丈夫」 「お前がっ……聞いてるだろっ!」  僕にとって、それが一番恥ずかしいという事に、何で翼は気がついてないんだ。 「大体、何で勢いに任せて……やんないんだよ。学校じゃ、そのままつっこみそうな勢いだったのに」 「だって、ミサキ、さっき怖がってたじゃん」 「う……」 「初めてのエッチがよくなかったら、もうしたくないって思うんじゃないかなーとか思って。それに」 「それに?」 「勢いに任せたら、痛いんだってさ」  僕のこめかみの辺りが、ぴくっと引きつった。 「……翼。あのさ、やたら男同士の事に詳しいみたいだけど、何で?」 「それは……まあ、聞くな」 「僕以外の人と、……練習したとか?」  僕の言葉に、翼は僕が怒ってる事にようやく気がついた。  あわてて、手を振りながら否定する。 「それはない! 絶対ない! 神に誓ってないっ!」 「僕とこういうふうになれる確証はなかったのに?」 「……ミサキの事が、もう好きじゃないって思えるまでは、他の誰とも、こーゆー事しないって決めてたから。だから、ミサキが好きって言ってくれて、すっげー嬉しい」  翼の顔をみてたら、胸の奥が、ぎゅってなった。気持ち悪い締め付けじゃなくて……ああ、キュンとなるって、こう言う事なんだ、って僕は生まれてはじめて分かった。 「……ばか」  翼はうれしそうな顔で、もう蜜をたらしている僕のそこに触れた。 「ひぅ……」 「ミサキのそういう声が、もっと聞きたいから、すぐ突っ込んじゃいたいけど、ガマンしてんだよ」 「ん……わかった……」  手でやわやわと触られてるだけで、僕のそこは喜んで、もっとたくさん透明な蜜をこぼす。  キスや体を触られるよりもダイレクトな快感は、簡単に僕の理性を取り崩そうとする。 「翼ぁ……何か、僕、おかしい……」  体から力が抜けて、うまく頭が回転しない。 「いいんだって、そのままで。俺が全部気持ちよくしてやるから」  翼は僕の足を軽々と持ち上げると、膝を左右に割った。 「やだ……翼、恥ずかしい」 「でも、ミサキのここ、すごくかわいいけど? 」  翼は、僕の袋をぺろりと舐めた。 「あーくそ。コンビニにローション置いてなかったんだよな。クソ、ドラッグストアにも寄ってくればよかったな」 「え……?」  意味がよく分からないで、ぽかんとしてたら、翼は僕の尻を割るようにして、そこに顔を埋めた。突然の事に僕は思わず大きな声を出してしまった。 「やっ……! 翼……汚いよ……ダメだったら」  そんな所、意識したことなんてなかった。  そこは、ただの、排泄器官。  なのに、舐められ、指でいじられ、ほぐされて、そこがヒクヒクと蠕動するのがわかった。翼の指に答えるように、入り口がのたうつように動くのが、自分じゃ止められなくて、もどかしい。  腰のあたりに重苦しいような感覚が溜まってゆく。 「あ……ふぁ……! 」 「動いてるよ、ミサキのここ」 「言うな、バカっ……」  考えたこともなかった。  そこを、そんなふうにいじられるなんて。  それから、それが気持ちのいいことだったなんて。  指のかわりに、舌がえぐるようにして、そこをたどる。閉じているはずのそこに、柔らかい舌が滑り込んで、唾液を注ぎ込んでくる。 「やっぱこれじゃ足りなそうだな」  翼は一旦立ち上がって、棚をごそごそすると薬品のようなものを持ってきた。 「ローションないから、ワセリンで勘弁な」  容器の蓋を開けて、指にたっぷり半透明のクリームを盛り上げると、それをさっきまで舐めていた場所に擦り付ける。 「……ヌルヌルして気持ち悪い」 「もう少し我慢な。体温で緩くなってくるから」  翼の言葉の通り、こね回されていたクリームは脂が溶けるように液体に近い状態になってきたのを肌で感じる。そのぬめりを使って、翼の指がするりと入り込んできた。 「ひぁ……っ!」 「痛い? 」  聞かれて、首を横に振った。 「ううん……でも、ヘンな感じがする……」  中でくりくりと指を動かされて、慣れない感触に僕は声を上げそうになる。 「ミサキの中、すっごい柔らかい。それに、熱いよ」  翼の唾液とワセリンのせいで、そこからは妙に水っぽい音がする。女の子のあそこみたいな、濡れた音が僕からするのがいたたまれないのに、翼はひどく嬉しそうだ。  くちゅくちゅ弄られて、ほっとかれてるペニスがゆらゆら揺れながら、時々とろとろと蜜を零してる。 「ひ! ……ぁん!」  翼の指がそこに当たった時、僕の喉から変な音が出た。  それが自分の声だと気がつくのに、少しかかる。  そこをこすられて、頭の中の、何かが壊れた気がした。  恥ずかしいとか、そういうのが全て飛んで、もっとして欲しいという欲求だけに体が取り付かれてる。  指を増やされて、ぐっとおなかに力が入ったけど、翼はためらいなく、指先を使ってそこを刺激する。  翼に持ち上げられてる足が、時々びくんと跳ね上がって、翼の顔を蹴りそうになるけど、それを押さえる事ができない。腰を落ち着かせておけなくて、ゆらゆらと動かしてしまう。 「あっ……あ……やだ……つばさぁ……」 「気持ちいい?」 「う……ぁ…………あぁ! 」 「なぁ、ミサキ。このままじゃ入れにくいから、俺のも舐めて」 「ん……」  僕はお尻をいじられながら、翼のびっくりするほど硬く立ち上がってるものを口に含んだ。翼のも、僕のみたいに、もうべとべとになってた。  全部は入りきらないから、まず半分くらいまで口の中に全部入れて、唾液を絡ませるように舐める。舌に苦さが広がるけど、かまわずそれを続けた。  根元の方も濡らそうと、一旦口から出すと、顔を横にして、唇で挟むようにして舐める。翼の雄の匂いが濃密にそこから立ち上って、頭がクラクラしてくる。 (これじゃ、僕、フェロモンに反応してる雌みたいだよ……)  舌にからまる硬い毛を指で弾き飛ばすと、翼と目が合った。 「もう、いい?」  僕はこくこくとうなずいた。  体中が熱くて、気が変になりそうだ。  早くかき混ぜて、どうにかして欲しい。 「指、三本まで入ったから、どうにかはなると思うけど……」  そんな事を言いながら、翼は僕を仰向けに寝かせると、足を簡単に肩担ぎ上げた。お尻が半分くらい浮いちゃって、重いんだろうけど、翼は平気みたいだった。  さっきまで僕の口に入ってた翼の屹立が、そこにあてがわれた。感覚が鋭敏になってるそこは、翼のが入り口に当たるだけで、ピクピク動いて、それを飲み込もうとする。 (僕……そんなに欲しがりだったの?)  すごく恥ずかしくて、翼に顔を見られたくなくて、目を閉じて、顔を横にした。 「入れるよ、ミサキ」  そう言って、翼が体を少し倒した。  痛み。  ソレだけが、そこを中心に体に広がった。  指とは全然違う、圧迫感と熱さ。  受け入れるためではない場所に、無理矢理受け入れてるんだ。  一度も感じた事のない衝撃に、目の奥がチカチカする。  内臓が口から出そう。  そこが、引きちぎられて、壊れてしまいそう。  恐怖と痛みに、体が硬くなる。 「ミサキ、ミサキ、力抜いて」 「わかんない……抜くってどうしたら……ヒっ……!」  あがいていると、するりと、翼が少しだけ前進した。 「そう、それ、その感じで……」 「わかんないよ……っ! 」 「じゃ、やめようか?」  翼の言葉に、僕は首を左右に振った。  翼は、いっぱい僕に優しくしてくれた。何年も僕が欲しいのに、いっぱいガマンしてくれた。だったら、僕もそれに答えたい。 「やだ……頼むから……最後まで……早く」  翼の刻印を、僕の体に刻んで欲しい。  だから、痛くても耐えたいんだ。 「お前、強情だよな……変な所」  ゆるゆると、翼の屹立が進入してくる。 「あっ……あ……ぁ!」  壁をこすり上げる。  逆流してくる圧迫感。  吐きそうだ。  悔しいけど、痛みで涙が出てくる。 (絶対……気持ちよくなんて、なれないっ!)  そう思うのに、やめようとは少しも思わない。  涙を、翼の唇がそっとなめ取る。 「ゴメンな、ミサキ」 「何で……翼が、謝るんだよっ」 「だって、俺が好きになったから、ミサキはこんな痛い思いしてんだろ?」 「違う……! 痛くても、翼が……好きだから、翼とひとつになりたいから、こうしてるんだろっ! だから、ちゃんと最後までして。せめて、翼だけは気持ちよくなって……」  僕は翼の頬を両手で包むと、自分からキスをした。  それだけで、僕の中にあるものが、ぎゅうっと膨らむのが分かった。  翼が、優しく僕のに触れる。  痛みでしぼみかけてたのに、翼に触られるだけで、また勢いを取りもどす。 「俺だけ気持ちよくなって……なんて、かわいい事言ってくれるじゃん。でも、どうせなら二人ともな……」  翼が腰を引く。 「ひあっ……!」  僕のそこがまたぎゅっと締まる前に、腰が当たるくらい深くまで、突き刺される。 「ああああっ……!」  悲鳴のような声が部屋に響く。それが僕の声だということに、僕はようやく気がついて、のどの力をこめて、それを必死で押さえ込む。 「う……うぅ……」 「きつい? ミサキ? でも、全部、ミサキの中に入ったよ」  翼が小さく、上に持ち上げるように動く。下腹部に重い振動が伝わって、背骨を圧迫感が駆け上がってゆく。 「やっ……! あ……あぁ……! こわれ……るっ!」  痛いのに、時々指がこすった気持ちのいい部分を、翼の棹がこすり上げていくのが、感覚を混乱させる。入り口は痛いのに奥は気持ちがいい。からだの中が、さなぎみたいにどろどろになって、ぐちゃぐちゃになってる気分。 「ミサキ、自分で動いてるの?」 「う……? わ、わかんない……でも…………あっ……そこに当たると……す……ごい……あの……」  気持ちがいい、とは口に出せなかったけど、翼は分かってくれたみたいだ。 「ここ?」  少し体を引いて、そこをダイレクトに突き刺されて、僕は悲鳴を上げた。 「ミサキ……やばいって……そんなに締め付けたら」 「……だって…………ふっ……んぁ…………!」  根元がぎちぎちに張って痛い。早くイキたくて、ふとももの内側が、なさけなくプルプル震える。  それなのに翼は、刺激するように大きく腰を使う。 「や……ぁん! も……ガマン……できな…………っ! 翼っ! 翼っ!」  僕は翼の名前を呼びながら、腕を突き出した。翼は肩に乗った僕の足を横に落とすと、僕の腕を取って、ぎゅっと抱きしめてくれた。  汗まみれの、熱い体が密着する。  濡れた体は不快じゃなかった。  僕たちの体に挟まれた僕のペニスは、まだ射精してないのに、ぐちゃぐちゃになってる。  ダメだ。もう頭がぼうっとして、意識が朦朧としてくる。考えてる事は、早くイキたいって事だけだ……。  ぎゅん、と翼が奥を穿った。  頭が真っ白になる。体がはじけ飛ぶような錯覚に、僕は悲鳴を上げた。 「ひぁっ!」 「ミサキ、ミサキ……好きだよ」  耳元で低くそう囁かれて、僕はようやく自分が射精してる事に気がついた。 「つばさ……」  何を言おうとしたかは、分からない。僕は、そこで意識を手放した。
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