2人が本棚に入れています
本棚に追加
「いってきます」
そう言って、僕は玄関を開けた。
「いってらっしゃい、気を付けてね」
母親の声を背中越しに聞きながら、僕は家を出た。
朝陽に照らされるコンクリートを黙々と歩く。自転車に乗った中高生、黄色い帽子をかぶった小学生が、僕とは反対方向に過ぎ去っていく。
見慣れた風景の先に駅が見える。ちょうど、電車が到着したようだ。あの電車に乗らなければ、僕は遅刻する。
あの電車は、駅で五分くらい停車するため、今から走れば間に合う。だけど、僕は走らない。そんな必要が無いから。
最初のコメントを投稿しよう!