仮面

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「いってきます」  そう言って、僕は玄関を開けた。 「いってらっしゃい、気を付けてね」  母親の声を背中越しに聞きながら、僕は家を出た。  朝陽に照らされるコンクリートを黙々と歩く。自転車に乗った中高生、黄色い帽子をかぶった小学生が、僕とは反対方向に過ぎ去っていく。  見慣れた風景の先に駅が見える。ちょうど、電車が到着したようだ。あの電車に乗らなければ、僕は遅刻する。  あの電車は、駅で五分くらい停車するため、今から走れば間に合う。だけど、僕は走らない。そんな必要が無いから。
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