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「いえいえ。別に。気にしていませんよ。元気に喋っていらっしゃるから、体調も落ち着いてきたようで、何よりだと思います」
何……それ?
満面の笑みで、美代にだけ答えるのは、おばあさんフェチの現れなのか?
祖母に対する態度と、一花に対する態度の違いは、一発殴ってやりたいほど、落差がありすぎる。
腹立たしさに、拳を強く握ろうとして、しかし、手に力が入らず、肩を落とすことしか出来ないのが悔しかった。
「それにしても、庭が絵になるほど、素晴らしくて、感動しました。いつもこちらを通る度に、通路脇のレモンの木が気になっていたので……。お茶も大変美味しくて、今日はお邪魔が出来て、光栄です」
青年は縁側に座って、美代から出されたお茶をすすりながら、「香花庭」自慢の花の庭に目を細めていた。
なにやら、静謐を楽しむ青年の「なりきりオーラ」が出ている。
これはもう完全に、居座る気満々だ。
そして、彼の滞在を目をハートマークにして、あからさまに喜んでいる美代もすごい人だった。
「ありがとう。色々気に入ってくれて。このお茶も、自家製ハーブで出したお茶なんだけど、初めて作ったから、どきどきしてて。美味しかったのなら、良かったわ」
「もちろん、とても気に入りましたとも。もしかして、これ……レモングラスですか?」
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