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青年の視線は、庭の一角に向かっている。
母屋から少し遠い、離れの下に植っている青々とした草。
祖母が育てているレモングラスがどれなのか、彼には分かっているようだった。
「あら、貴方、分かるのね? そうよ。あそこのレモングラスをトッピングしてみたの。香りが楽しめるでしょ」
美代は更にテンション高めに身を乗り出した。
ハーブの話ができる若者に、感動したようだった。
(へえ……。あれがレモングラスっていうんだ)
一花は園芸、料理共に、まったく知識がない。
残念ながら、プレゼントで貰ったアロマオイルの中に、名前だけは聞いたことがあったレモングラスも、一花には、伸びきった雑草にしか見えなかった。
「虫よけに植えているんだけど、香りが良いし、身体にも良いから、お茶にしてみたの。宜しかったら、お代わり、どう?」
「ぜひ」
「ちょっと、おばあちゃん」
「ほら、いっちゃんも飲んで。すっきりすると思うから」
透明の耐熱カップに注いだお茶を、一花に差し出すと、お代わり分を作るべく、台所の方に引っ込んでしまった。
あの様子だと、ついでに化粧直しもしてくるかもしれない。
…………分かっている。
美代は、純粋に嬉しいのだ。
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