2、赤い花

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 母のようになんて、生きられるはずがないことは、よく分かっていたから……。  だけど、「普通」というのは、どうしてなのか、一花にとって一番難易度の高いことだった。 「普通じゃ……ないわ」  朝から、唖然としてしまった。  葉山の祖母・美代の家に身を寄せた翌日の台所で、何か手伝おうと早めに起きたはずの一花だったが、美代の素早い動きに目を回すだけで、気が付いたら朝食が出来上がっていた。 「おばあちゃん……」 「早いわねえ。ゆっくり寝てて良かったのに。いっちゃん、身体、本調子じゃないんでしょう?」  無理だ。  たとえ、体が絶好調だったとしても、美代の機敏な動きについていく自信なんてない。  派手めの化粧と格好を好んでいる美代は、堅実、質素を心掛けている一花の母とは何もかも正反対だ。まったく似ていないせいか、たまに忘れそうになるが、美代は、あの母の母親である。  出来る者同士だから、対立も根が深い。  一花の母は、離婚の時のいざこざを機に、美代を心の底から嫌っている。  だから、一花は美代と会うこと自体が久々だったのだ。
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