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先月、祖父の三回忌がなかったら、電話やメールくらいのやり取りはあっても、こうして同居することなんてなかったかもしれない。
「すごいな。おばあちゃん。どうやって、こんな何品もすぐに作れちゃうの? 私、一品作るだけでもやっとだよ」
「そりゃあ、もろちん。誰かに作ってあげて、喜んで欲しいって思う気持ちがあるからよ」
美代は白いエプロンで手を拭くと、そそくさと、大皿に盛っていた料理を小皿に取り分けて、綺麗に盛りつけをしていく。
黒い四角い皿に卵焼き、青い丸皿に焼き鮭、三つの白い小鉢には、それぞれ茄子のおひたし、大根ときゅうりの漬物。大根おろしの乗った納豆。
味わい深い漆器の汁碗には、ほうれん草の味噌汁。陶器の茶碗に、艶のある白いご飯が盛られると、美味しそうな白い湯気が一花の食欲をさそう。
こんなに充実した朝食を一花が口にするのは、母が本格的に働き始める前の幼稚園以来かもしれない。
「誰かに作ってあげたい……。そういうものかな。それでも、やっぱりセンスとかあるって思うけど……」
過去、振り返ってみると、何度か母のために料理を作ったことがあったが、お前は料理下手だから、台所に入るなと叱られた記憶しかなかった。
母の嘲笑を思い出す度に、昨日会った統真の冷笑も連鎖して思い出してしまう。
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