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民宿の手伝いをしながら、少し休んだら、新しい仕事を探して、決まったら速やかに出て行く。
「香花庭」は、美代が七十五歳を迎えたら、辞めるのだと、ずっと前に自ら宣言していた。
長居していることが母に発覚したら、一花と母の親子関係だけでなく、美代の方が悪影響を受けてしまうかもしれない。
いつまでも、美代に甘えているわけにもいかないのだ。
一花の事情について、一切何も聞かず、家に招き入れてくれた美代に、余計な心配なんて掛けたくなかった。
その一心で、一花は元気良く振る舞っているのだが……。
しかし、昨日から、ふとした瞬間、美代が眉間に皺を寄せながら、一花に物言いたげにしていることがある。
そう……。
この瞬間も……。
やはり、一花のマイナス思考は、タダ漏れしているのだろうか?
「どっ、どうしたの? おばあちゃん」
「ううん、何でもないの。いっちゃんの体のことが心配になっただけよ」
「それは大丈夫だって言ったじゃない。春の健康診断だって、貧血以外は引っかからなかったのよ。私……。だからね、出来ることなら、何でもやるから、言ってね。おばあちゃん!」
「いっちゃんは、そんなに、頑張らなくてもいいのに」
「嫌だな。私、まだ何も頑張ってもないよ」
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