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「ねえ、おばあちゃん、この庭に真っ赤な花ってなかった? 私、昔、その花がとても好きで……」
洗濯物を終えた一花は、居間で食器を洗っていた祖母に問いかけた。
「ん? 赤い花って? 百日紅のこと?」
「違う、違う。もっとこう……真っ赤で」
「ゼラニウムなら、離れの近くに植えているわよ。今は暑さで弱っているけれど」
「ゼラニウム……かあ。うーん」
その花のことなら、以前、住んでいたマンションの近くにも植わっていたから知っている。
しかし、一花がここで見た真っ赤な花は、ゼラニウムではなかったはずだ。
夜に咲いていた。
真紅の…………。
「他に赤い花って、植わってないかな?」
「じゃあ、ハイビスカスとか?」
「だいぶ違うなあ」
「じゃあ、今はないわねえ。彼岸花だったら、いっちゃんだって分かるだろうしね。昔は何か植えていたかもしれないけど? 何だろう? コスモスはピンクと白だけだったし……紫陽花もピンクで……うーん…………」
腕を組んで、必死に考えている美代に、一花はなんだか申し訳なくなってしまった。
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