23人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうしよう。いっちゃん、何かお詫びした方が良いかしら?」
「別に、いいんじゃないかしら? 美味しいって飲んでいたわけだし」
「でも……」
納得がいかないらしい、美代は再び「あっ」と大声をあげて、手をぽんと叩いた。
「ああ、いっちゃん。おばあちゃん、良いこと思いついたんだけど、おばあちゃんの特製「おはぎ」。これを持って行ったら、日色さんも喜んでくれるかしら?」
「…………おはぎ?」
「いっちゃんが来るからね、餡は多めに作っておいたのよ」
(虎の子のおはぎ……か)
たまに顔を合わせる時、いつも美代は一花に手作りのおはぎを土産に持ってきてくれた。
亡くなったおじいさんが好きで、美代はいつも何かあると、大量に作っていたのだ。
しかし、好き嫌いもあることだし、わざわざ持っていく意味はあるのだろうか……?
「いっちゃんもお世話になったことだし」
「…………そ、そうね」
それを指摘されると、一花も弱い。
「このまま、料理下手のおばあちゃんって思われたくないしね。いっちゃんの体調さえ良かったら、これから作るから、上の別荘まで持っていってくれないかしら? 当分、滞在する予定だと仰っていたから、今日もいらっしゃるでしょう」
「じゃあ、おばあちゃんも一緒に行って……」
「だ、駄目よ! おばあちゃんは、今回は留守番で……ね?」
「へっ?」
「だって、本当は、日色さん、怒っていたかもしれないじゃない?」
美代が、頬を赤く染めて、もじもじしている。
どうしてか、そういう部分は、乙女らしい。
(お母さんと、こういうところが亀裂の入った原因なんだろうな)
最初のコメントを投稿しよう!