23人が本棚に入れています
本棚に追加
/159ページ
執事がいる時点で、相当な家だと察していたが、まさか、ここまで豪奢な家が祖母の家の上に建っていたなんて……。
(やっぱり、あいつ芸能人かなんかなのよ……)
テレビは観ているが、最近の流行には鈍感な一花だ。
自分の知らないところで、ブレイクしている人気者なのかもしれない。
(おはぎ……食べるかなあ?)
一花は、とてつもない不安に襲われていた。
こんな桁違いの場所で暮らしている青年が、美代の作ったおはぎを美味しいと言って、食べるのだろうか?
第一、一花の身長の優に二倍はある門扉を開けてくれるのだろうか?
(どうしよ……。私、こんな格好だし、不審者扱いされて通報されそうだわ)
昨日のブラウスだけは真っ青なチュニックに変えたものの、パンツは昨日と一緒のものだ。
上下合わせても、量販店で三千円にもならない女に、金持ちの道楽息子が偶然でもない限り、気前よく会ってくれるとは思えない。
(でも、あの人、昨日のおばあちゃんのハーブティは飲んでいたわけだし、おばあちゃんには好印象だったってことでしょ。その、おばあちゃんが作った「おはぎ」なら、食べてくれるんじゃない?)
緊張する。
最初のコメントを投稿しよう!