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「オバサン…………てね」  『酷い顔』『オバサン』。 (そうでしょうとも。自覚はありますよ……)  地雷ワードを二つ並べても、詰め寄る元気すらない一花を、さすがに青年も見兼ねたらしい。 「可哀想に」  バカにされるより、憐みを向けられる方がダメージも大きかった。 (こんな奴に、弱みなんて見せてらんないわ)  どうにか平気なフリを装うとした一花だったが………………。  しかし、青年は何を思ったか、軽々と一花を抱き上げてしまった。 「ひゃっ!」 「面白い悲鳴だな」  つまり、色気がないと言いたいらしい。   この青年、華奢に感じたが、思いのほか、力はあるようだった。  軽いとは言い難い、一花を持ち上げても、飄々としている。 「ちょ、ちょっと、待って下さい」 「待てないのは、君の体調だろう?」  体調もよろしくないが、気持ちも落ち着かない。  この世のものとは思えないほど、綺麗な顔が眼前に迫っているのだ。 (この人、俳優? それともモデル?)  しかし、むっつり眉間に皺を寄せた青年は、混乱している一花に一瞥もくれやしなかった。
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