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【 第十二話: 初めての音楽番組出演 】
『さあ、それでは次に、今話題のCM美女、100年に一度の逸材と言われる「佐藤サリー」さんにご登場頂きましょう。それでは、佐藤サリーさんの初シングル曲です。どうぞ!』
司会者がそう言うと、マジカの待っている壇上へスポットライトが当たり、扉が開いて、マジカの姿が映し出された。
「(うわぁ~、な、何、これ? わ、私、アイドルになっちゃったの?)」
そのアイドルのデビュー曲がかかると、マジカは初めて聞く曲に戸惑っているようだった。
ステージ脇で見ていた俺は咄嗟に、彼女の戸惑う姿を見て、サリーからマジカに替わってしまったことを察知した。
そこで、俺は、予め用意しておいたマジカ用の音符と歌詞が書かれた楽譜を取り出して、マジカに見せた。
マジカであれば、暗闇でも、小さな音符・文字でも、音階とリズムさえ分かれば、アンドロイドなので、何とか凌げると考えていた。
「(マ、マジカ! これ! こっち見て!)」
「(あっ? ヒロシ。えっ? それ、この曲の楽譜?)」
「(そう、この通り歌って!)」
「(わ、分かった。やってみる!)」
そう言うと、マジカは1ページ分を記憶すると、すぐに歌い始めた。
俺が事前に聞いていた、サリーが歌っている曲とほぼ同じように、マジカは歌った。
AメロからBメロに移行する前に、楽譜の次のページをマジカに見せて、それを瞬時にマジカは記憶し、歌い続けた。
サビの部分に入る頃には、マジカも慣れてきて、何とかアイドルとしての初めてのステージを乗り切った。
人間では絶対に無理だが、さすがこの時ばかりは、マジカの能力の高さを改めて実感していた。
曲が終わると、マジカは恥ずかしそうにはしていたが、頬をピンク色に染めて、笑顔を作り、微笑んでいた。
さすが、その点もマジカの対応能力の高さを俺は思い知らされた。
ステージ上に立っているマジカは、キラキラと輝き、正に正真正銘の次世代アイドルとして相応しい可愛らしさだった。
「どうもありがとうございました。やぁ、素晴らしい澄んだ歌声でした。どうでしたか、初めての音楽番組は?」
「はい。とても緊張しました」
「そうですか。初めは少し戸惑っているような様子でしたが、歌い始めたらアイドルらしく、可愛い歌声でしたよ~」
「ありがとうございます」
「今、ランキングも急上昇していますので、今後のご活躍期待しています。どうもありがとうございました。佐藤サリーさんでしたー!」
「どうもありがとうございました」
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