【 第十七話: 仲直りの雪合戦 】

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【 第十七話: 仲直りの雪合戦 】

 次の日、俺が朝目覚めると、外がいつもよりも静かなのが気になり、俺は徐にカーテンを開けてみた。  すると、窓の外には、一面真っ白な雪が積もっている景色が、俺に目に飛び込んできた。  昨日の夜、外がやけに静かに感じたのは、雪が降っていたからだとその時初めて理解できた。  俺がそんなことを考えながら外の景色を眺めていると、彼女が近寄ってきてうれしそうにこう言った。 「うわぁ~、すごいきれい~。真っ白~」 「うん。そうだね」  その様子から、今日はサリーだということがすぐに分かった。  サリーは雪を実際に見るのは初めてなのだ。 「これが雪?」 「そうだよ。これが雪」 「外に出て触ってきてもいい?」 「ああ、もちろんいいよ」 「ヒロシも一緒に行こ」 「よし! 行くか」  サリーは、一面降り積もった雪に、子供のようにはしゃいでいた。 「うふふふ、きゃ! 冷た~い」 「あれっ? 冷たいの分かる?」 「ヒロシより、冷たいのは分かるんだから」 「そうだよな。ははは……」  俺ははしゃいで楽しそうにしているサリーに、雪を軽く固めて投げつけた。 『バンッ!』 「きゃっ! もう、ヒロシやったな~。私だって、エイッ!」 『バンッ!』 「うわぁ~、冷た~」 「うふふっ、命中~」 「このやろう~、それっ!」 「きゃあ~、外れ~。サリー、逃げちゃうもん」 「逃げるな~、待てぇ~」 「きゃあ、あははは……」 「待て、待て、待てぇ~」 「きゃははは……」  一度はあんなに彼女と離れているように感じていたのに、この出来事で彼女との距離はまた元のように近付いたような気がした。  サリーのこんなにうれしそうにはしゃぐ姿を見るのは、どれくらいぶりだろう。  やはり彼女は、無邪気に笑っている方が似合っている。  そんな一時の幸せを感じながら、しばらくサリーと雪でじゃれ合っていた。 「うわぁ~」 『バサッ』 「雪の上でこうして大の字になるのも気持ちいいよ。サリーも一緒にどう?」 「うん! サリーも一緒にやる! うわぁ~」 『バサッ』 「ほんとだぁ~、雪のクッションで気持ちいい~」 「でしょ? サリー、手を繋がない?」 「う、うん……。繋ぐ……」  そう言いながら、サリーは恥ずかしそうに俺の方を見ると、ゆっくりと手を重ねてきた。  サリーの手は、さっきまで雪合戦をしていたせいで、冷たくなっていた。  俺は、サリーの手をやさしく包み込むように握って、冷たくなったサリーの手を温めた。  俺たちは、お互いの顔を向き合って、にっこりとやさしい笑顔で、微笑み合っていた。 「サリー、今日さ、会社休みだから、サリーと二人きりでクリスマスイブを過ごしたい。いい?」 「うん、もちろん……」 「ありがとう。サリー」  俺たちは、雪の上で『大』の字を2つ描いていたが、やがてそれは一つの『Ⅰ』の文字になり、その形で雪を少しずつ溶かしていくように、しばらく二人で寄り添っていた。
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