【 第三話: 授賞式① 】

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【 第三話: 授賞式① 】

 そして、授賞式の朝がやってきた。  気がかりなのは、今日はマジカなのか、それとも、サリーなのかである。  俺は起きると、真っ先に彼女がどちらか確認した。 「今日さ、何の日だか分かる?」 「うん。分かるよ。コンテストの授賞式の日でしょ?」 「(あぁ~、良かったぁ~、マジカで~)そうそう……」 「早く支度しないと、授賞式に遅れちゃうよ」 「うん。支度して行こうか」  今日は、幸いなことに彼女はマジカだった。もし、サリーだったら、授賞式のことは言ってなかったので、恐らくはビックリしてしまっただろうから、俺は内心ホッとしていた。  そして、俺たちは、写真コンテストの授賞式会場となっている上り坂ホールへ到着した。 「ここが上り坂ホールか……」 「こんな大きくて立派なところで授賞式するのね。ちょっぴり、マジカ緊張してきた……」 「大丈夫、マジカはいつも通り、ニコニコ笑って賞を受け取ればいいんだよ」 「うん。マジカ頑張ってみる!」 「よし。行こう!」 「うん!」  会場の入り口付近には、何やら沢山の人たちが押し寄せていた。 「こんなに人が来ているんだ……」 「すごい人ね……。私、何だかこわくなって来ちゃった……」 「大丈夫、俺が付いているから」 「うん。守ってね。ヒロシ」 「あぁ、任せとき」  とは言ったものの、その人だかりを前に、俺も相当の緊張が押し寄せていた。 「俺たちは受賞者だから、別の入り口から入るみたいだよ」  すると、授賞式の係りらしき人が近寄ってきて、 「授賞式に出られる『佐藤様』ですか?」 「あ、はい。そうです」 「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」  そう言って俺たちは、その係りの人にVIP待遇されたかのように案内された。  授賞式会場へ入ると、俺たちは一番前の席に通された。  既に会場には、どんどん人が集まって来ており、否応なしに緊張感が漂い始めていた。  そして、時間になると周りが暗くなり、前方のステージだけが明るく照らされていた。 『ブーッ』 「それでは、只今より、第1回上り坂写真コンテストの授賞式を始めます」 『パパパパーン』 「(ヒ、ヒロシ、いよいよね。何か、マジカ緊張して来ちゃった……)」 「(だ、大丈夫、いつも通りのマジカでいいんだよ……)」  そう言いながらも、俺の手は小刻みに震えていた。ひょっとすると、俺の方がマジカよりも緊張していたのかもしれない。  膝の上に置いた手は、ビッショリと濡れていた……。
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