【 第四話: 授賞式② 】

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【 第四話: 授賞式② 】

「まずは、準グランプリからの発表です」 「(準グランプリだから、まだだよね? ヒロシ?)」 「(うん。大賞だから、多分最後だと思う……)」 「さあ、いよいよ、大賞、グランプリの発表です」 『ドロドロドロドロドロ……』 「大賞は、佐藤 サリーさん。おめでとうございます!」 『パパパパーン!』 「佐藤サリーさん、壇上へお上がり下さい」 「はい」  マジカはそう言うと、ステージ上に登って行った。  と、次の瞬間、何とマジカは足を踏み外してしまった。 『コツンッ!』 「きゃ!」 『ガタタン!』 「マ、マジカ大丈夫か!」  俺は思わずそう叫んでしまった……。  すると、彼女は起き上がると、何か様子が変だった……。 「ま、まさか、サリー、サリーになっちゃった……?」 「佐藤サリーさん、それではこちらへどうぞ」 「えっ? 私、どうしてこんなところに居るの? えっ?」  俺は小さな声でサリーに言った。 「(サリー! そのまま賞を受け取って!)」 「えっ? 賞を?」 「(いいから! そのままその賞を受け取ればいいんだ!)」 「さぁ、佐藤サリーさん、おめでとうございます。この写真で見事大賞を受賞致しました。」 「えっ? 大賞受賞?」 「そうですよ。余りの驚きに信じられないような表情ですが、大賞のクリスタルトロフィーをお受け取り下さい」 「あ、ありがとうございます」  そう言って訳も分からずサリーがクリスタルトロフィーを受け取ると、  けたたましい音楽と共に、もの凄い数のカメラのシャッター音が鳴り響いた。 『パパパパーン』 『パシャ、パシャ、パシャ、パシャ、パシャ、パシャ……』  記者たちのカメラのフラッシュのシャワーが、一斉に彼女に浴びせられた。  驚いた様子のサリーの顔は、まるで子供のようにキョトンとした様子だったが、それがまた記者たちが望んでいた顔でもあったようだった。 「いやー、おめでとうございます。見事に大賞を受賞しました。今のお気持ちをお聞かせ下さい」 「え、あ、あのー、とてもうれしいです……」 「大賞ということで、とても驚いていらっしゃる様子ですが」 「あ、はい。とてもビックリしています……」 「このお気持ちを一番誰に伝えたいですか?」 「え? だ、誰? ヒ、ヒロ、か、家族に一番伝えたいです」 「そうですか~。家族ですか~、そうですよね~」  恥ずかしそうなそのサリーの顔は、見る見るうちにピンク色に染まって行った……。 「賞金の他に、副賞としてCM出演が決まっていますが、今後の抱負をお聞かせ下さい」 「CM出演ですか……?」 「はい。CM出演が決まっているんですよ」 「そうなんですか。精一杯、頑張りたいと思います……」 「そうですか。本日は、大賞受賞、おめでとうございます!」 『パパパパーン』 『パシャ、パシャ、パシャ、パシャ、パシャ、パシャ……』  もの凄い数のフラッシュが、彼女の潤んだ目に反射して光を放っていた。
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