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【 第六話: 100年に一度の逸材 】
俺は自分のやってしまった失敗と、授賞式でのマジカとサリーの入れ替わりで、すっかり気を落としていた。
しかし、その夜、テレビをつけてみると、俺の思っていたこととは、全く正反対の出来事になっていた……。
『第1回上り坂写真コンテストで、見事、佐藤サリーさんが大賞を受賞しました』
「あっ、私がテレビに映ってるよ。ヒロシ!」
「えっ? あ、あれっ? ほんとだ! 何で?」
そう、先ほどの出来事がテレビで放送されていたのだ。
『大賞ということで、とても驚いていらっしゃる様子ですが』
『はい。とてもビックリしています』
『このお気持ちを一番誰に伝えたいですか?』
『家族に一番伝えたいです』
「な、何かうまいこと編集してある……。(テレビってすごっ!)」
「私、もっとたどたどしかったと思うけど……。編集されているね……」
『佐藤サリーさんはスポンサーのCM出演も決まり、その日たまたま訪れていた有名映画監督は……』
『いやぁ~、彼女はすごくキュートで、真面目そうないい子だよね。一目で惚れしちゃったよ。私が是非CM撮りたいね』
『と絶賛。また、大手レコード会社のプロデューサー松本氏によると、彼女は100年に一度の逸材とも言われ始めているそうです』
「えっ? 私が100年に一度の逸材? ねぇ、ヒロシ。それって、どういうこと?」
「お、俺もよく分からないけど、何か、俺たちが思っていた方向とは違う方に向き始めたみたいね……」
「違う方に?」
「う、うん。ちょっと、スマホでネットも一応、調べてみよう……」
俺はネットでのサリーの情報を見てみた。すると、それはとんでもない『どえらい』ことになっていた……。
「な、何だこりゃ? サリーの記事が一杯出てるぞ……。100年に一度の逸材って、トップニュースになってる……」
「えっ? 本当?」
「ほ、ほら、見てみて……」
「うわぁ~、ほんとだぁ……。トップニュースになってる……」
「そんなにすごい賞だったんだ……。あの賞は……」
「私のこと、CMとか、モデルとか、アイドルとか、女優とか、書いてある……」
「すごいことになっちゃったかもね……」
「どうしよう、ヒロシ……」
更に翌朝には、朝のワイドショーや、新聞記事にも取り上げられ、サリーの評判は一人歩きし、世間からは絶賛の嵐だった……。
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