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【 第八話: 次世代アイドル 】
連日、サリーのテレビやラジオ、雑誌など、話題のCM美女として、忙しい毎日が続いていたある日、あの大物プロデューサー松本からアイドルデビューのお誘いがかかった。
「実は~、サリーくんを是非、次世代のアイドルとして、デビューさせたいと思っているんだ」
「えっ? 私が次世代アイドルですか……?」
「あぁ、そうだ。私がプロデュースすれば、間違いなく売れるよ。どうだね?」
「私がアイドルですか……、アイドルが務まるのか少し不安があります……」
「大丈夫だよ。今や君は、このアイドル雑誌の人気ランキングで、デビューもしていないのに、1位を取っちゃているんだからね。相当な人気ぶりだよ」
「わ、私が1位ですか……?」
「あぁ、まだデビュー前だと言うのにね。これで、デビューしたらぶっちぎっちゃうこと間違い無しだよ」
「私が、アイドル……」
「そうだ。君は次世代のアイドルになるんだ。僕と一緒にね」
「少し考えさせて下さい」
「君、考えるまでもないだろ。僕がデビューを保証するって言ってるんだよ。分かってるの?」
「……」
俺が家に帰ると、突然マジカは俺に飛び付き、泣き出した。
「ヒロシ、私、アイドルなんかになりたい訳じゃない……」
「ど、どうしたんだい? 突然……」
「私、アイドルにならなくてもいい……」
「何かあったのかい?」
「マジカ……、サリーさんみたいに、かわいくなれないし、強くもなれない……」
「マジカ、あの大物プロデューサーの松本に何か言われたのかい?」
「うぅぅ……、私にはアイドルなんかより、もっと違う夢があるの……」
「違う夢?」
「うん……、マジカね……、ヒロシのお嫁さんになりたい……」
「お、俺のお嫁さんに……?」
「うん……、ヒロシのお嫁さんになるのが、私の夢……」
「そ、そうか……、マジカ、ありがとう……。とってもうれしいよ。俺もマジカを絶対にお嫁さんにする」
「ほんと?」
「うん。約束するよ」
「うわぁ~ん、ヒロシ、ありがとう……」
マジカは今まで押さえ付けていた感情が一気に溢れ出すかのように、俺の胸で声を出して泣いた。
俺はマジカの中に、サリーに対するライバル心と嫉妬心、そして、劣等感があるように感じた。
でも、このまま無理をして、マジカがアイドルになったとしても、彼女にとっては、それは必ずしも幸せではないのかもしれないと、俺はその時思っていた。
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