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「ラーメン食ったぁ?」サイファの声が悲痛に裏返った。「射千花(いちか)は決してあんな店でラーメンなんか食わなかったぞ!」  それはそうだろう。レディ・マクベスがどんぶりに顔を突っ込んで麺を啜る場面は想像できない。 「いいか、あの店はハマーズのものだ」 「ドラッグ・ディーラーの?」 「辛辛帝国はハマーズの資金洗浄をしてる。ハマーズは『宣告者たち(セイヤーズ)』の資金源だ」 「セイヤーズって、『真理宣告者たち(トゥルース・セイヤーズ)』?」 「そうだ。反長命者(メトセラ)の急先鋒、長命者殺し(メトセラ・スレイヤー)射千花(いちか)を殺した連中だ!」  一瞬目眩がした。身体が地面の下に沈んでいくようだった。 「メトセラ殺しのブタ小屋のど真ん中で、メトセラの娘がバカ面曝してラーメンを犬食いすれば…」 「バカ面ってなによ!世界でいちばんかわいいって言ったの、あなたじゃない」 「今はかわいいとか貧乳とかの問題じゃない。  きみは、なにかの意図をもって『宣告者たち(セイヤーズ)』を挑発してると誤解されたか、彼らが突発的に身代金目的の誘拐を目論んだか」 「わたしが射千花の娘だから、百舌口針一郎の娘だから狙われた?」 「そうだ。彼らが病的な貧乳マニアじゃない限り、その可能性は捨てきれない」 「まだたわごとを続ける気ならコンセントひっこ抜くわよ、サイファ」 「たわごと?」 「バカ面、犬食い、貧乳」 「なぜヒトは真実に直面するのを畏れるんだ」 「どこが真実よ」 「いちばん大事な真実はきみが生きてることだ。  『宣告者たち(セイヤーズ)』がきみの死に関わっていて、やつらがきみが生きてることを知れば、どうなるかわかるだろう」 「わかるわよ。わたしは二度とあの店のラーメンが食べられないんでしょ」 「笑えないな。もう一回死んでみるか?」 「それこそ笑えない」 「認めるんだ。きみはまたトラブルに巻き込まれる可能性がある。生命を狙われるかもしれない」 「だから、それがいちばん聞きたくないことなんだってば!」
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