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ミケマルは妙に正確におなかを空かせる猫だった。
朝の6時前後になると、必ず大音声で朝食を催促した。
そのおなかに全幅の信頼を寄せていたわたしは、目覚まし時計を使わない人生を長く送ってきた。
だから、ミケマルが旅立った翌日。
わたしは初めて会社に遅刻をした。
その翌日、わたしは目覚まし時計を使って無事に起きることに成功した。
ただ、今度は逆の現象がおきた。
時間が異様に余るのだ。
ミケマルとの時間がそっくり抜け落ちたからだった。
餌の用意。制服やカバンについた抜け毛の掃除。
ほかにも、話しかけたり、ちょっかいをだしたり、なでたり。
そんな、名前のつかない時間。
失って初めて知ったその長さ。
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