まだきみがいた

4/12
前へ
/12ページ
次へ
  ミケマルは妙に正確におなかを空かせる猫だった。  朝の6時前後になると、必ず大音声で朝食を催促した。  そのおなかに全幅の信頼を寄せていたわたしは、目覚まし時計を使わない人生を長く送ってきた。  だから、ミケマルが旅立った翌日。  わたしは初めて会社に遅刻をした。  その翌日、わたしは目覚まし時計を使って無事に起きることに成功した。  ただ、今度は逆の現象がおきた。    時間が異様に余るのだ。  ミケマルとの時間がそっくり抜け落ちたからだった。  餌の用意。制服やカバンについた抜け毛の掃除。  ほかにも、話しかけたり、ちょっかいをだしたり、なでたり。     そんな、名前のつかない時間。  失って初めて知ったその長さ。  
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加