まだきみがいた

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  やってきた電車に乗り込む。  毎日毎日、同じ時間の同じ車両だから周りの人間は見知った顔ばかりだ。  友達よりも顔を合わせているのに、名前すら知らない不思議な関係。  この関係性をあらわすふさわしい日本語ってなんだろう?  そんな物思いに耽っていたせいで、1つの空席に気づくのが遅れてしまった。  けれど、なぜだか誰も座らなかった。  ついてるなと思ったけれど、わたしも敢えて吊革に手を伸ばした。  思い返してみると、ミケマルを失った直後のわたしの心には、大きな悲しみの陰に、小さな喜びともとれる感情もあったように思う。    寝坊をしたとき。時間が余ったとき。  そこには確かにミケマルの存在を感じることが出来たから。  忘れていない。そんな証左でもあったから。  しかし、いまはそれも無くなってしまった。  その複雑な感情は、単純な自己嫌悪へと姿を変え、日々薄くなる悲しみとは反対に増幅を続ける。  わたしは冷たい人間だ。
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