まだきみがいた

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  道行く車もほとんどいない朝またぎのころ。  静寂に包まれた部屋を、目覚まし時計のけたたましい音が切り裂いた。  暗闇のなか、わたしは手探りでそれを止め、そして小さく独りごつ。 「これにもすっかり慣れちゃったな」  寝室を出て和室にむかう。  急ぐ理由もないのでゆっくりと歩を進める。  和室には仏壇が設えられており、そこには3枚の写真が飾られている。  母親。父親。そして最後の1枚は最近になって増えてしまったものだ。  つぶらな瞳でこちらを見つめる、ややぽっちゃりした三毛猫。 「おはよう。ミケマル」  ミケマル。先月、老衰で天国に旅立った。享年16歳。
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