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ケンタウルスの時計技師
『ボーイッシュな格好をした二十代の女性。
後ろで無造作に纏めた黒髪。
時計見ルーペ。
黒いジャケットとブーツ。ハスキーな声。
街外れにある使われなくなった廃天文台にて、
鏤めた鉱石で星座を刻んだ巨大な絡繰時計を、
作っているらしい。製造目的は不明。
本当に作っているかも定かではないが、
天文台へ肝試しに行った子供達や、
現行犯逮捕出来なかった犯罪者達の、
行方不明事件が最近起きている。
悪い子は彼女によって石にされる、
とも噂されている。』
✴︎
「私には、もう一度逢いたい人がいる。
漸く分かり合えた人だった。
恋ではないし、愛とも少し違うけれど。
他には何も要らないくらい、大切な人だった。
それなのに、消えてしまった。
もう逢えないと絶望するほど遠くて、
届かない場所へいってしまった。
だから、もう一度再現するんだ。
あの日を。あの場所を。
御祭りみたいな、
奇蹟みたいなあの星空を、もう一度。
その為の光が必要なんだ。
勿論、無闇に奪ったりしないよ。
でも、散り際の屑なら良いだろう?
誰かを瑕つける人が平気で生きているのに、
私だけが辛いなんて。
そんなのは、卑怯だ。」
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