水子のココロ4

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水子のココロ4

向かいの女の人が妙に気になって上目遣いに盗み見る。 思い詰めた顔色。暗い眼差し。たぶん、そうじゃない側だ。 産婦人科にはいろんな人がやってくる。子どもがいる人いない人、子どもが欲しい人欲しくない人、産む人に堕ろす人……みんな色んな事情を抱えていると、頭ではわかる。 じろじろ見るのは失礼だと自粛、さりげなく視線を切ろうとして…… 「ん?」 胡乱げに眼を細める。 向かいの女の人……こないだ某ファッションセンターで見かけたのとおなじ花柄のブラウスを着てるから、便宜的にしまむらさんと呼ぶことにする……の肩のあたりに、ふわふわと丸い光が浮かんでいる。 目の錯覚かと忙しく瞬き、それでも消えないと目を擦る。 屈折率が関係する光の悪戯? 待合室を見渡すけど、私以外ほかのだれも気付いてないっぽい。 宙に浮かぶ白っぽい光の球は、ふわふわほよほよ、甘えるようにしまむらさんに纏わり付く。 「……もしかして」 後だしで大変恐縮な自己申告だけど、実は私には霊感がある。 ちょっと厨二っぽく言うと、現役バリバリの霊感少女だ。 とはいっても、どっかのお寺生まれのTさんみたいに悪霊を物理で倒したりはできない。前世が超すごい神様だったり大妖怪だったりもしない。たぶん。 通学路で轢かれた三丁目の奥貫さんの飼い犬が、半透明で雑草を食べてるとこにうっかり出くわしちゃっても、基本ただ見て、見過ごすだけだ。 そんな現役バリバリの霊感少女な私は、謎の光の正体を直感する。 「水子だ……」 早い話、生まれてこれなかった赤ちゃんの霊だ。 水子っていうのは流産や死産になった赤ちゃんのことで、私が現在進行形で目撃してるのも、おそらくそれだ。 一瞬恐怖を感じて仰け反る。 いきなり顔を引き攣らせ、手が滑った勢いでカバンを落とした私を、隣の人がふしぎそうに一瞥する。 落ち着けサチ。 産婦人科なんだもの、水子の霊がいたって全然おかしくない。
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