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キヨカさんの透ける手が白い本を手に取り、恐る恐る表紙を開いた。
そして何度も、『これでは無いみたい』と言って、表紙を閉じた。その度に、かすかに鈴の音が聞こえた。
沢山の、違うキヨカさんの人生の感情を受け止めながら、目の前の彼女は苦しそうに見えた。
「では次の本を……」
鳩麦さんは、静かに本を受け取る。
私は、ふと思った。
彼女の、キヨカさんの泣いた理由を知れたからと言って、解決には至らないのでは無いだろうか?
果たして、悲しみの感情の理由が分かったからと言って、それがなんになるのだろう? 私は、それを鳩麦さんに聞き出せなかった。
『あ』
キヨカさんが、小さな声をあげた。
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