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次の瞬間、真っ白な本は彼女の手を離れ、空中で次々にページがめくられていった。
薄暗かったはずの図書館の中に光が満ちていき、キヨカさんの腕が、顔が、長い髪が、金色の光の粒子をまといながら形成されていく。
『ごめんなさい……!! ごめんなさい……!! おかあさま……!!』
キヨカさんが顔を手で覆って泣きじゃくる。
『思い出しました……。私、お友達と活動写真を見に行くって……!! おかあさまの大事なブローチをこっそり借りて……。キチンと返すつもりだったのに……後で見たら、真珠の飾りが無くなっていて……。探したんです、でも……』
キヨカさんは床にへたりこんだ。
体は半透明だけれど、髪も体もみんな形として存在していた。十六、七歳位だろうか。長い髪の上にリボンが付いていて、小さな鈴が揺れていた。
『私、大事な、おばあ様からの贈り物だったなんて知らなくて。おかあさまは許してくださったんです。でも、悲しそうな瞳でブローチを眺めていらして。ずっと申し訳なくて、どんなに謝っても申し訳なくて』
鳩麦さんはしゃがみこんで、半透明の彼女の背中を撫でた。
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