転換

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(地球では"砂漠のギャング"といわれているミーアキャットが、宇宙では蛇を恐れているのか。 宇宙(スペース)アニマルには捕食が必要ない分、天敵の概念が変わってくるのだろう。蛇がどのような脅威であるのか……) カッ、シャシャシャ。 シュッシュ――。 仮説を書いては消し書いては消し……。 (やはり、のが1番だ) 動物を愛する心の矛盾に、ヒヤリとしたものを感じる。 (今更だな) それからしばらくプロキオンに留まり、アローとその周りにいる宇宙(スペース)ミーアキャットたちの観察を続けたが、危機は訪れなかった。 天敵について、今回の旅では解明できそうもない。 (いや、それだけではない) 宇宙(スペース)アニマルに関して、分からないことが多すぎる。 行動に関しては見ていれば規則性がある程度は分かる。 しかし、身体機能に関してはそうはいかない。個体を捕らえ、解剖や実験を繰り返さなければ見えてこないものもある。 (まだ誰も踏み込んでいない……誰かがやらねば) シュルシュルシュル。 アローたちの会話や行動から、いくつかの仮説を立ててまとめていく。 ぽーん。 『デイヴィッド。地球とテレビ電話が可能です。連絡をとりますか? 奥様が1人でシカゴのご自宅にお待ちだと伺っておりますが――』 「いや、結構。 それと、妻は1人ではないよ。天使を身に宿しているからね」 『1度も連絡をとらないおつもりですか?』 シュッ、シュッ。 (仮説を立てて、早く実験を……) 『3ヶ月もの間、暗く広い宇宙で1人きりというのは、精神衛生上よろしくないかと』 シャシャ――。 『妊娠中の奥様も』 シュッ。 手を止め、深呼吸をする。 (いや) 焦る必要はない。 今回の目的は気分転換の旅行であり、星磨きに関する簡単な調査だ。 「お気遣いどうも。 だが、私も妻も独りではないよ。 ところで、アローはどこに行ったんだい?」 『星磨き本部です。そちらに移動しますか?』 「ああ、お願いするよ。もうしばらく同じ個体を追っていたいからね」
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