11人が本棚に入れています
本棚に追加
一番星
本部とは、月の事だった。
月の裏側で、各宇宙アニマルがクレーターごとに陣取り、それぞれが担当している星の輝きをチェックしているそうだ。
宇宙ミーアキャットの本部は、体の大きさに似合わない1番大きなクレーターにあった。
「ボクが金星のリーダーを?」
「1度やってみないか? そろそろ新しい世代にも活躍してもらわなくては」
「5等星生まれのボクが、金星を任せてもらえるなんて……皆のおかげだよ、ありがとう!」
「「「いえーい!」」」
「さすがですぜ! アロー、ばんざーい!」
「「「ばんざーい!」」」
「さっそく今から金星に向かってくれ」
「了解しました!」
ぴょーん。
アローが勇ましく飛び立った。
『アローを追いますか?』
「ああ、お願いするよ」
金星のチームは、ふわふわ浮きながらアローを迎えた。
アローも着陸はせず、浮いたまま挨拶をしている。
「みんな、よろしくお願いします!」
「アローの金星デビューだ。張り切って磨くぞー!」
「「「おー!」」」
ふわふわ〜。しゅるしゅる〜。
宇宙ミーアキャットたちが、金星のまわりを泳いでいる。
「他の星とは様子が違うのだね」
『金星は、生き物にとって危険な星です。近づきすぎると死んでしまう……
だからと言って、粉を撒くのが遠すぎては星磨きの意味がありません。
金星の星磨きは、彼らにとって特別なのです。優秀で勇敢な動物でなければ、金星は任せてもらえません。
ここ500年の間は、ずっと宇宙ミーアキャットが磨いてきたそうです』
アローが浮いたまま姿勢を正した。しっぽがピンと立っている。どうやら通信をするようだ。
「クークー、こちら金星。輝きチェックお願いします!」
「了解した。
……よし。
アロー、素晴らしい輝きだよ。よくやった!」
「ありがとうございます! やったよ、みんなー!」
「「「いえーい!」」」
「ただ……
残念なことに現在、地球では雨が降っている」
「そんな……」
アローが項垂れているのが見える。
ジジ――……。
翻訳アナウンスの音質が荒れた。ガサガサと、チャンネルが微妙にズレているラジオのような音だ。
『失礼しました。受信強度を調節します』
キュイ………ジジジ――……。
「――んだって? アローの金星デビューなんだぞ! こんなことが、あってたまるか! 晴れろっ……! 晴れやがれ!」
「晴れやがれ! 晴れやがれ!」
ようやく鮮明に聞こえるようになり、私は気づいた。これは――。
(プロキオンで聞いた声だ)
「そうだ、そうだ! 晴れろー!」
「お願い、晴れて……!」
スクッ。
スクッ。
いたるところで宇宙ミーアキャットたちが次々に直立を始め、地球に向けてテレパシーの波を送っている。
「みんな……!」
アローは顔を上げ、地球を見る。
「晴れて!」
「晴れなよ!」
「お願い……!」
「「「晴れろー!」」」
最初のコメントを投稿しよう!