一番星

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一番星

本部とは、月の事だった。 月の裏側で、各宇宙(スペース)アニマルがクレーターごとに陣取り、それぞれが担当している星の輝きをチェックしているそうだ。 宇宙(スペース)ミーアキャットの本部は、体の大きさに似合わない1番大きなクレーターにあった。 「ボクが金星(いちばんぼし)のリーダーを?」 「1度やってみないか? そろそろ新しい世代にも活躍してもらわなくては」 「5等星生まれのボクが、金星を任せてもらえるなんて……皆のおかげだよ、ありがとう!」 「「「いえーい!」」」 「さすがですぜ! アロー、ばんざーい!」 「「「ばんざーい!」」」 「さっそく今から金星に向かってくれ」 「了解しました!」 ぴょーん。 アローが勇ましく飛び立った。 『アローを追いますか?』 「ああ、お願いするよ」 金星のチームは、ふわふわ浮きながらアローを迎えた。 アローも着陸はせず、浮いたまま挨拶をしている。 「みんな、よろしくお願いします!」 「アローの金星デビューだ。張り切って磨くぞー!」 「「「おー!」」」 ふわふわ〜。しゅるしゅる〜。 宇宙(スペース)ミーアキャットたちが、金星のまわりを泳いでいる。 「他の星とは様子が違うのだね」 『金星は、生き物にとって危険な星です。近づきすぎると死んでしまう…… だからと言って、粉を撒くのが遠すぎては星磨きの意味がありません。 金星の星磨きは、彼らにとって特別なのです。優秀で勇敢な動物でなければ、金星は任せてもらえません。 ここ500年の間は、ずっと宇宙(スペース)ミーアキャットが磨いてきたそうです』 アローが浮いたまま姿勢を正した。しっぽがピンと立っている。どうやら通信をするようだ。 「クークー、こちら金星(いちばんぼし)。輝きチェックお願いします!」 「了解した。 ……よし。 アロー、素晴らしい輝きだよ。よくやった!」 「ありがとうございます! やったよ、みんなー!」 「「「いえーい!」」」 「ただ…… 残念なことに現在、地球では雨が降っている」 「そんな……」 アローが項垂(うなだ)れているのが見える。 ジジ――……。 翻訳アナウンスの音質が荒れた。ガサガサと、チャンネルが微妙にズレているラジオのような音だ。 『失礼しました。受信強度を調節します』 キュイ………ジジジ――……。 「――んだって? アローの金星デビューなんだぞ! こんなことが、あってたまるか! 晴れろっ……! 晴れやがれ!」 「晴れやがれ! 晴れやがれ!」 ようやく鮮明に聞こえるようになり、私は気づいた。これは――。 (プロキオンで聞いた声だ) 「そうだ、そうだ! 晴れろー!」 「お願い、晴れて……!」 スクッ。 スクッ。 いたるところで宇宙(スペース)ミーアキャットたちが次々に直立を始め、地球に向けてテレパシーの波を送っている。 「みんな……!」 アローは顔を上げ、地球を見る。 「晴れて!」 「晴れなよ!」 「お願い……!」 「「「晴れろー!」」」
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