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1月21日
「今日は、悪魔の召喚術式をやろうと思う」
「いきなりどうしたんですか」
突拍子もなく変なことを言い出した、目の前の彼女の言い分は、「おもしろそうだから」。
その変な言い分から来る出来事のせいで、恐らく僕も今日一日を無駄に過ごすのだろう。
「まあ、君がつまらなそうって思うのも仕方ないと思うんだ!!だけど、私はやりたいの!!付き合ってくれるよね!!ね!!」
「まあ、付き合いますけど......」
鬱陶しいほどの興味と熱量、そして共にやって欲しいという心意気だ。面倒くさい、とも思うが、一応付き合ってやる他ない。
「よーっしやるぞー!!」
彼女はぐっと拳を上に掲げて、溢れんばかりのやる気をそのまま体現している。
「無駄にハイテンションなんですね分かります」
「冷たっ!!まあ、いいよ!魔法陣書いてロウソク火付けて、ササッと終わらせちまいましょうや!!」
「そうですね」
そう言って、不健康な色白の手と共に部屋中央のコタツを退けてやると、
「やっさしーぃ♪ありがとっ!」
と、大袈裟に声を張って感謝を述べる彼女。全く、耳にキーンと響いて煩くて仕方がない。でも、その大袈裟すぎる所にまた愛嬌がある。
「じゃー早速!!それっ!!」
「雑」
バシャッ、という音と共に床に撒かれるペンキ。あまりにも雑すぎる、それを僕は素直に声に出して伝えた。
「いーのいーの!!」
もう少し丁寧にやろうという気概はないのか、言い出しっぺは君なのに。と思う気持ちをぐっと堪えて、僕はロウソクの配置に取り掛かった。
「こことここ、あとここに二本ずつですか」
「え?こっちは三本じゃないの?」
「君が見つけてきた本にこう書いてあるのですが」
「あれ?そうだったっけ?」
「そうですよ」
「そうだったか〜!」
そんな下らない会話を繰り返しながら、小一時間ほどかけて魔法陣とやらを書き上げたのだが、結局、召喚はできなかった。もし召喚できたなら、この荒涼感に満ちた部屋と窓の外に広がる白に、インパクトを与えることができただろうに。
まあ召喚こそできなかったにしろ、満足気に笑っている彼女を見ると、自分の頬が自然と綻ぶのがわかった。
「にしても、どうしておめでたなお正月から悪魔召喚を?」
「決まってるじゃんっ!黒魔法とやらで寿命を伸ばしてくれないかなって思って!!」
「下らない」
「酷いっ!!」
オーバーリアクションもまた愛嬌。目に涙をじわあと浮かべた彼女は、また次の"唐突"を考えているのか、体育座りの腕の中に顔をうずめて、時折くふふ......と薄ら寒い笑い声を上げながら考え込んでしまった。
「......ふふ、」
その様子にすら、釣られて笑みを零してしまう自分は、相当......なのだろう。
......突拍子がなくとも、唐突でもいくらくだらなくとも、また付き合ってやろう。
だって、次、また"下らない事"ができるか分からないのだから。
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