9月18日

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9月18日

「......ぁふ......」  ......これで、欠伸(あくび)したの何回目だろう......  そんなことを考えながら、私はふと、白い天井を眺めた。  シミがぼやけて、なんだかぐちゃぐちゃして見える。あ、でもあれ、元からか...... 「......」  ......この時間、この時間が最近の私は大嫌いだ。寂しくって、(かな)しくって、辛い......今日はあの子も、春崎(はるさき)さんもいない。看護師さんやヘルパーさん達は他の人につきっきりで、今現在いろんな意味で落ち着いてる私のことなんかは、誰も気にしてない。  それに、家族は...... 「っ......」  なんでだろ、今日はいつもよりもずっと(かな)しい。  ......あの日、あの時、あの瞬間のことは、正直に言えば............辛かった。  12月の、世間がクリスマスだ年越しだって騒ぎ立てていた、ちょうどあの頃。  あの人達は、私をここに連れてきてすぐに、いっそ清々しいくらいにすっと帰ってった。あの子も、その中に混じってた。  冬の寒さを凌ぐための服のせいで着ぶくれした、肩の荷を下ろしてせいせいしてる人達が歩き去っていく背中を、ときどきこっちを振り返るあの人達の顔を、私は見てなかった。  その後ろの、遠く方の山のてっぺんに積もった雪を、笑って手を振りながら見つめてた。見てるしかなかった。 「......ふわぁ............」  ......あの時の私は、あの人達のことを見ることができなかった。  別に今思い出しても、別に怒りも恨みも、悲しみも私はしない。  せいぜい怒るとしたら、誕生日くらいは自分でハンバーグ食べたいけど、食べられないことくらい。......って、これ別に誰も悪くないしな〜......  ......今月は、あの子はまだ来てない。 「......忙しい、のかな......」  もう水すらまともに飲めない私は、これから先...... 「あー、やめだやめだ......これ以上、こうしてると......余計なこと、考えちゃう......」  自分のほっぺたを弱く叩いて、私は本に視線を向けた。 「......早く、来ないかなー......」  自分でもわかってる、残された時間はあと少し。  ......今年の末が、関の山。......あってるよね、関の山で......  とにかく、時間がない。私とあの子には......  そう考えて、私は静かに目を閉じた。
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