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「病院に来る途中で倒れてるのを見つけんだ」
「可哀想に、こんなに痩せ細って…」
「熱が高いし意識もほとんどない。すぐに集中治療室に運ばないと」
「名前は言える?教えてちょうだい。あなたの名前は?」
ジイチャンは私をガールと呼んだ。
ジイチャンは私に読み書きを教えてくれた。
ガールの意味を知って、こんな名前イヤだとジイチャンに言った。
でもジイチャンは、
『名前なんてない方がいい。名前がない方が誰の記憶にも残らないし、呼ばれる煩わしさもない。名前がない方が身軽だ』
と言った。
「名前が分からないんじゃ、警察に言っても親を探しようがないわね」
「この子が感染してるということは、もしかしたら親も…家の食料が底をついて外出禁止令が出てる最中、一人で街に出たんじゃないか」
「可哀想に…元気になったらお腹いっぱい食べましょうね。あなたの好きな食べ物は何かしら?」
『もっとお菓子が欲しい』
と、私はジイチャンに言ったけど、ジイチャンはお菓子は虫歯になるからとあまり買って来てくれなかった。
甘いものが食べたい…チョコレートやキャンディ、ケーキにシュークリーム、お腹いっぱい食べたい…食べたい…
『こっちにおいで』
『ジイチャン?』
『お菓子をいっぱい買って来てやったぞ。だから、こっちにおいで』
「眠っちゃダメよ!しっかりして!」
「ウイルスなんかに負けるな!!」
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