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若者は体を起こして受け取った。どこか痛みがあるようなほほえみは、大きなひまわりのような笑顔に変わっていた。そして絵を抱きしめた。
「恋人ですか」
「はい。良くおわかりになりましたね」
「絵を見ればわかります。タッチ、色使い、モデルへの慈愛が感じられたんです」
「本当に、本当にありがとうございます」
郁雄の目から涙がこぼれ落ちた。
「もしかして、その絵のモデルの女性は、もう……」
「……ええ、亡くなりました」
涙をぬぐいながら、郁雄は語り始めた。
「恵美と最初に出会ったのは、高校一年の時です」
若者は、窓の外に視線をやった。
(続く)
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