2 淫紋を持つ者

3/9
前へ
/354ページ
次へ
しかし、樹理も、悪い話だとは思っていないようだった。 これは、この店の宣伝にもなるからだった。 つまり、この男娼館には、面白い男娼(俺は、男娼じゃねぇけどな)がいる、と話題になれば、客足も増えるというものだからだ。 それから、3日ほどして、冒険者ギルドから俺に、絵の具と、絵筆と、質のいい紙が何枚か届いた。 絵の具は、白、赤、青、黄の4色だけだった。 マジか。 4色だけって。 俺は、一瞬そう思ったが、贅沢は言えない。これだけあれば、十分、まかなえるだろう。 俺は、男娼館の仕事の合間に、イラストを描いた。 やっぱ、久しぶりの色つきの絵は、よかった。 気のせいか、この世界は、色が地味というか、ほぼ灰色に近い色ばかりというイメージだった。人々の服装もそうだったが、建物も、とにかく、何もかもが灰色を基調とした色合いだった。 これは、俺の置かれている状況が異常なせいだけじゃなかった。 ただ、この季節に咲く花だけは、薄いピンク色で、どことなく桜を思わせる花だった。 俺は、鎧姿の戦士のキャラクターと、桜をイメージした女の子のキャラクターを描くと、それぞれを鮮やかな青とピンクを用いて仕上げていった。 これを3パターンほど描いて、ギルドからの使いへ引き渡した。
/354ページ

最初のコメントを投稿しよう!

292人が本棚に入れています
本棚に追加