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しかし、樹理も、悪い話だとは思っていないようだった。
これは、この店の宣伝にもなるからだった。
つまり、この男娼館には、面白い男娼(俺は、男娼じゃねぇけどな)がいる、と話題になれば、客足も増えるというものだからだ。
それから、3日ほどして、冒険者ギルドから俺に、絵の具と、絵筆と、質のいい紙が何枚か届いた。
絵の具は、白、赤、青、黄の4色だけだった。
マジか。
4色だけって。
俺は、一瞬そう思ったが、贅沢は言えない。これだけあれば、十分、まかなえるだろう。
俺は、男娼館の仕事の合間に、イラストを描いた。
やっぱ、久しぶりの色つきの絵は、よかった。
気のせいか、この世界は、色が地味というか、ほぼ灰色に近い色ばかりというイメージだった。人々の服装もそうだったが、建物も、とにかく、何もかもが灰色を基調とした色合いだった。
これは、俺の置かれている状況が異常なせいだけじゃなかった。
ただ、この季節に咲く花だけは、薄いピンク色で、どことなく桜を思わせる花だった。
俺は、鎧姿の戦士のキャラクターと、桜をイメージした女の子のキャラクターを描くと、それぞれを鮮やかな青とピンクを用いて仕上げていった。
これを3パターンほど描いて、ギルドからの使いへ引き渡した。
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