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奴隷商人って、何?
「お前、言葉、わかるのか?」
「ああ?」
俺が頷くのを見て、じいさんが、言った。
「バカでは、ないんじゃな。わしの言うことは、わかるのか?」
俺は、じいさんの言葉にこくこくと頷いた。じいさんは、満足そうに笑った。
「なら、いい。あまり見かけぬ服装だしどうやら異国の者らしいが、なんか、訳あってここに売られてきたのじゃろう」
売られてきた?
ちょっと、待ってください。
じいさんは、俺にかまわず、話続けた。
「まあ、奴隷商人とはいえ、ここは、良心的な店じゃから、そんなに心配することはない。売られるまでは、毎日、飯も出てくるし、週に一度は、風呂にも入れる。後は、よい主人に恵まれることを祈るんじゃな」
そう話してくれたじいさんは、数年前に借金の方にここに売られてきたらしい。以来、売れ残り続け、今では、ここの主になっているのだという。
この国は、龍仙国とかいうこの世界で一番大きくて、古い大国であり、龍の子孫である王が治めているのだという。
俺は、この世界の人間じゃないということを確信した。だが、この国の人々の言葉が理解できた。おかしなことだ。
俺は、なぜ、ここに連れてこられたのか。
俺は、もとの世界では、中学の美術の教師をしていた。もとの世界では、特に熱心な教師であったという訳ではなかったが、そこそこ真面目に生きていた。
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